歯削る機器、滅菌せず再使用7割…院内感染懸念(読売新聞)

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先日(5月18日)読売新聞朝刊第1面にタイトルの記事が出ていました。
(記事詳細は下記に添付してあります)

滅菌とはすべての細菌やウイルスを死滅させる方法で、歯科の治療器具を滅菌する場合、120℃以上の高温で所定の時間留置する方法が一般的です。オートクレーブという、ちょうど圧力釜のような器械を使います。船曳歯科クリニックでは、患者さんの口の中に入る器具で、120℃以上の熱に耐えられるものは、患者さん毎にすべてオートククレーブで滅菌します。

20年以上前にアメリカで「キンバリー事件」 http://en.wikipedia.org/wiki/Kimberly_Bergalis が起こりました。キンバリーさん(女性)がHIVを発症し、彼女がかかっていた歯科医から複数のHIV感染者が報告されたことで、その歯科医が感染源である可能性が高いとされました。歯科治療でHIVに感染すると全米を震撼させた事件です。

それ以降、アメリカではキャンペーンを行ない徹底的にハンドピースを滅菌するよう努めました。以下はアメリカでの歯科臨床における院内感染予防ガイドライン(2003年)の一部です。

A.エア/給水管に取り付けられた歯科用ハンドピースおよびその他の装置
1.患者を治療する毎に,歯科治療ユニットのエアおよび給水管から取り外しができるハンドピースや,その他の口腔内器具を洗浄し,加熱滅菌する
3.歯科治療ユニットのエアおよび給水管から取り外しできるハンドピースやその他の口腔内器具には,表面消毒も液体化学滅菌剤またはエチレンオキサイドを使用してはならない

どういうことかというと、タービン(歯を削る高速回転器具:キーンと音のするやつ)などのハンドピースは、必ず患者毎に加熱滅菌しなさい、加熱滅菌しか方法はない、ということです。

20年前、当時のアメリカのTV番組のインタビューに答えていた歯科医師は、歯科治療で使ういろいろな器具のうち、もしもどれか一つしか滅菌できないとしたら、ハンドピースを滅菌すると話していました。ハンドピースだけは、中空(チューブ状)で、中が洗えないからというもっともな理由でした。

読売新聞のこの記事によると、7割が滅菌していないとのこと。7割!ほとんど滅菌していないということです。正直私も驚きました。しかも回答があったのが約3割なので、実際に滅菌をおこなっていない割合はさらに増えそうです。

しかし、この記事が出てから、患者ごとの滅菌に対応するため、タービンなどハンドピースやオートクレーブなどの器械の注文が増えていると聞きます。良い傾向ではあります。

自分のかかっている歯科医院が滅菌しているか?どうやって確かめたらよいのでしょうか?残念ながら、7割から判断すると、滅菌していない可能性が高いとなります。

勇気を出して聞いてみることでしょう。といっても正直に答えてくれればの話ですので、最終的には、信頼関係という曖昧なところになりそうです。

まずはっきりとハンドピースを滅菌していると告知しているかどうか?がわかりやすいと思います。

船曳歯科クリニックでは、10年前の開業以来、タービン、マイクロモータなどのハンドピースは、患者さん毎にオートクレーブで滅菌しています。

~以下、読売新聞の文面~

歯を削る医療機器を滅菌せず使い回している歯科医療機関が約7割に上る可能性のあることが、国立感染症研究所などの研究班の調査でわかった。
患者がウイルスや細菌に感染する恐れがあり、研究班は患者ごとに清潔な機器と交換するよう呼びかけている。
調査対象は、歯を削るドリルを取り付けた柄の部分。歯には直接触れないが、治療の際には口に入れるため、唾液や血液が付着しやすい。標準的な院内感染対策を示した日本歯科医学会の指針は、使用後は高温で滅菌した機器と交換するよう定めている。
調査は、特定の県の歯科医療機関3152施設に対して実施した。2014年1月までに891施設(28%)から回答を得た。
滅菌した機器に交換しているか聞いたところ、「患者ごとに必ず交換」との回答は34%だった。一方、「交換していない」は17%、「時々交換」は14%、「感染症にかかっている患者の場合は交換」は35%で、計66%で適切に交換しておらず、指針を逸脱していた。
別の県でも同じ調査を07~13年に4回行い、使い回しの割合は平均71%だった。

 

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