むし歯は、痛くありません。
多くの人は、むし歯は痛いものと思われているようです。むし歯は、歯が溶ける病気ですが、実は歯が溶けたからといって痛くはないのです。
「いやいや、むし歯で痛くなったことがあるよ」と反論がありそうですが、歯が溶けること自体は痛みがないのです。
むし歯で痛みが起こる場合は、歯が溶けるだけではなくて、歯髄(歯の中にある、俗に神経といわれている部分)が炎症を起こしていると考えられます。エナメル質と象牙質の分厚い壁が何年もかけて歯髄近くまで溶かされ、歯髄の中に細菌が侵入すると身体の防御反応として炎症を起こします。簡単にいうと“腫れてくる”のです。硬い歯で覆われた歯髄が腫れると、腫れようとするその圧力は歯髄自身にかかってきます。歯髄の内圧がどんどん高まると、猛烈な痛みが起こって、もうどこが痛いのかさえ判らないようになる場合があります。そうなってしまうと、大切な大切な歯髄が細菌に侵されて、結果的に歯髄を失ってしまうことになります。そうなると、将来その歯自体が失われるリスクが格段に高くなってしまいます。
例えば、この虫歯。治療中の写真ですが、奥歯の真ん中少し左に黒い小さな穴が開いているのがわかります。
患者さんは、奥歯が黒くなっていることが気になっていたようですが、まったく痛みはありませんでした。
溶けているところをそーっと、丁寧に取っていくと、こんなに大きな穴になりました。歯が溶かされているところが染まるお薬で染めてみると…、むし歯がまだ残っています。
さらに少しずつ丁寧にむし歯を取っていくと、最終的にこんなに大きな穴になりました。これだけ溶けていたのです。最初の写真の小さな穴とはまったく違います。
もう少しで歯髄に到達します。ほとんど歯髄が透けて見えるくらいです。
でもまったく痛くもかゆくもなかったのです。冷たいものがしみることもなかったようです。
これは、ほんの一例です。
ここで私が言いたいことは、「痛くないから大丈夫!」ということない!ということです。しっかり検査してみなければわからないことがたくさんあります。
むし歯は日に日に大きくなることはあっても、自然に治ってしまうことはないのです。大切な歯を生涯大切に残したいと思われるならば、長い人生の中で一度は、是非デンタルドック(お口全体の精密検査)を受けてみましょう。そしてむし歯があるか?ないか?だけではなくて、なんで歯が溶けたのか?その原因をしっかり見つけましょう。
むし歯ができたら、その都度削って詰めるというような後追いの治療ではなくて、その原因をお口の中から一掃して、むし歯と歯周病を徹底的に予防しましょう。悪くなるのを待つ必要はないのです。
そうすれば、きっとあなたのお口の将来は良い方に変わります。