今晩のクローズアップ現代は、生体肝移植がテーマでした。
神戸のポートアイランドに去年11月に開設された「神戸国際フロンティアメディカルセンター」 この病院で生体肝移植の手術を受けた9人のうち5人が死亡するという事例を検証しながら生体肝移植について考えるというものでした。
「神戸国際フロンティアメディカルセンター:通称KIFMEC(キフメック)」ができていきなりの出来事。劇場であれば杮(こけら)落とし的な場面。絶対ミスは許されず、細心の注意が払われての準備から執刀、看護だったはずと思われます。それなのになんで?という疑問がありました。
今晩のクローズアップ現代では、その一端が紹介されていました。TVですので、事実はもっと深く一般人には分からないことが多いのだと思いますが、生体肝移植と脳死移植、国によっての違いなど勉強になりました。
解説としてゲスト出演されていた生命倫理が専門の橳島次郎氏によると、そもそも生体肝移植とは、ドナーとなる健康な人を傷つけて行う医療なので、倫理的には本来は「やってはいけないこと」というのが原則であるとのことでした。もっともなことです。
アメリカとフランスを例に出していました。どちらも肝移植手術は生体肝移植に比べて圧倒的に脳死移植が多いのですが、日本は逆に生体肝移植が全肝移植の約9割を占めるほど生体肝移植が盛んにおこなわれているようです。
その理由には、アメリカやヨーロッパでは生体肝移植にはさまざまな規制があって簡単に行えないが、日本には規制する法律がない。そのことで生体肝移植がある意味野放しになっているというのです。
日本は国の成長戦略の一環として医療産業を挙げています。KIFMECも海外からの患者を呼び込もうというのが狙いで、国も神戸市も生体肝移植を積極的に進めようとしているようです。しかし神戸市や兵庫県の医師会からは、そもそも原則としてはやってはいけない生体肝移植を積極的に進めるべきではなく、ましてや産業として利益追求をするべきではないという立場で抗議していました。
しかし一方、肝移植など命に直接かかわる場合、患者側からすれば生体肝移植であっても脳死移植であっても、その方法しかなければその方法にすがるはずです。日本のように脳死での臓器提供が少なく待機している患者が多い場合、生体肝移植に頼ることもよく理解できます。そのような強いニーズ(要望)があれば基準にとらわれずに移植に踏み切ることも理解できます。
橳島次郎氏は番組の最後にこう述べています。
はっきりしているのは、他の人から貰うということに頼っていたら生体移植にしても脳死移植にしても非常に限りがあって難しいので、他の人から貰わないで、臓器をとっかえなくても、その前に臓器の病気を治せるようにできる、それが本当の高度医療だと思うんですね。その高度医療を伸ばしてそれを医療産業として育成するんだという姿勢が日本では大事なのではないか。だから臓器移植の件数を増やすことを目標にしてはいけないし、それを医療産業の目玉にしてはいけないと私は思います。
最後のこの意見には、強く賛成します。結局求めるべきは予防なのです。