
上の一番奥の歯です。
溝が黒くなっています。
虫歯です。
治療すべきか?経過を観るか?微妙なところですが、中央の部分の虫歯がエナメル質を超えて象牙質まで進行していそうなので、治療です。

治療
麻酔をして、ラバーダムをして、細菌が感染している部分を取り除いていきます。
虫歯の取り残しがないように、しかし削る量は極力少なく、しかし詰め物の強度を担保できる厚みを確保するように、詰めるときにうまく詰められるようにある程度の幅が必要、と相反するような条件をうまくクリアするように形を作ります。
医療行為とはいえ、患者さんの歯をいったん傷つける行為です。
慎重に。
詰めるときは隙間ができないように、丁寧に、この作業がこの歯の将来を決定づけるのだから。

ラバーダムが必要
写真に写っている青いシート。
ラバーダムといいます。
この小さな虫歯の治療にもラバーダムを使いますが、それは主に2つの理由があります。
一つ目の理由は、削った歯の中に唾液が入り込んで、詰め物の下に再び細菌を感染させないためです。
二つ目の理由は、歯と詰め物の樹脂(コンポジットレジン)を接着させるために接着剤(ボンディング剤)を使うのですが、歯が少しでも唾液で濡れてしまうと極端に接着力が低下するので、絶対に唾液の侵入は防がなければならないからです。
今回の治療は、一番奥の歯なので、ラバーダムをしなければ洪水のように流れてくる唾液で汚染されてしまうからです。
唾液で汚染されても治療はできますし、おそらく数か月で詰め物がはずれたり、虫歯が再発して痛くなるようなことはないでしょう。
しかし、2~3年、あるいは10年の時間を考えたとき、この汚染が再治療へ誘います。
一生の中で、この歯の治療はこれで最後にしたいので、10年ではなく寿命まで再発を防がなければなりません。
再治療になる場合…
数年後、もしも虫歯が再発した場合どのようなタイミングで発見されるでしょうか?
痛くなったときでしょうか?詰め物がはずれたときでしょうか?
どちらにしても虫歯がかなり進行しなければそのようなことはおこりません。
このようなことがおこると次は歯髄(神経)が危険になります。
もしも歯髄が失われると今度は歯自体が危険になります。
実際に歯が失われるパターンはこのように進行していきます。
ですから今回のような小さな虫歯を治療する場面はとても貴重です。
今回の虫歯のように問題の火がまだ小さなうちに確実に消火できれば、今後は安心です。
知らず知らずのうちに火が大きくなってしまうのをなんとか防がなければなりません。
歯の治療はいまだけのことではなくて、一生のことなのです。
ですので、あらゆる治療をする場合に少なくとも5年先、10年先のことを考えなければなりません。
そうすると丁寧に削って、丁寧に詰めるだけでは解決しない問題があることに気が付きます。
そもそもなぜこの歯に虫歯ができたのか?という問題です。
この問題が解決しない限り、歯が溶けることはつづくでしょう。
主には正しいプラークコントロールの習慣と砂糖の摂取のコントロールという問題です。
簡単そうで実は奥の深い問題かもしれません。
そもそも簡単な問題なのであれば、虫歯はほぼこの世からなくなっているはずです。
私たちのクリニックでは、予防プログラムを通して計画治療の最初にこの問題を解決していきます。
丁寧なメンテナンスチェックが大切
今回の虫歯は、実はメンテナンスで何年も経過を観てきたものです。
実際には、自分で発見するのは不可能でしょう。
痛くないですし、舌触りも健康な歯と変わりないですし、何より自分では見えません。
歯科医が使っているような小さな鏡と別の手鏡などの合わせ鏡をうまく使っても、家庭では鏡が曇ったり、照明が暗かったりでなかなか見えないでしょう。
ここで歯科医や歯科衛生士による丁寧なチェックが必要なのです。
歯科医や歯科衛生士であれば、鏡で見ただけで上の写真のように虫歯があることはわかります。
しかし前述のように「なぜ虫歯になったのか?」という問題が解決されていない限り、高い再発のリスクが残ります。
歯科医や歯科衛生士には、この「なぜ虫歯になったのか?」という問題に目を向ける能力や習慣が必要だと思います。
虫歯を発見してただ削って詰めるだけでは治らないないのですから。
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